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ティオン・バル、朝8時。路地の奥に残るコピティアムと、一枚のカヤトースト
グルメ 🇸🇬 Singapore

ティオン・バル、朝8時。路地の奥に残るコピティアムと、一枚のカヤトースト

シンガポール最古の計画住宅街ティオン・バル。朝7時の路地に漂うコピの香りと、一枚のカヤトースト。観光客が素通りする朝の顔を丁寧に追う旅の記録。

| 8分

シンガポールの朝は、高層ビルの隙間からではなく、古いタイル張りの路地の奥から始まる。ティオン・バルという街を知っているだろうか。観光客の多くはマリーナ・ベイやチャイナタウンへ向かうが、ここには1930年代から変わらない朝の顔が、静かに残っている。

ベストな時期・時間帯

ティオン・バル、朝8時。路地の奥に残るコピティアムと、一枚のカヤトースト

ティオン・バルの朝を楽しむなら、7時から9時の間がもっとも豊かだ。地元の常連たちがコピティアムに集まり、注文の声と湯気が路地に満ちるこの時間は、観光客がほとんどおらず、街本来の空気を感じられる。シンガポールは年間を通じて気温30度前後と蒸し暑いが、早朝だけは風がやわらかく、木漏れ日の中を歩くのが心地よい。

訪問のベストシーズンは2月〜4月10月〜12月。スコールの多い時期を避けた朝は、アーチ型の建築に光が差し込み、写真としても美しい。週末は近隣住民が増えるため、静かに歩きたいなら平日の朝がおすすめ。

核心スポット・メニュー・体験

ティオン・バル、朝8時。路地の奥に残るコピティアムと、一枚のカヤトースト

Tiong Bahru Bakery(ティオン・バル・ベーカリー)

コピティアムの重厚な空気とは少し趣が異なるが、この街を語るうえで外せない存在だ。ショップハウスを改装した白い空間には、フランス仕込みのクロワッサンと、地元の食材を使ったペイストリーが並ぶ。早朝から地元の人々が立ち寄り、テイクアウトのコーヒーカップを片手に路地を歩く姿は、今日のティオン・バルらしい朝の風景のひとつ。焼きたてのクロワッサンは開店から1時間ほどで売り切れることも多い。

地元の人が知っていること: 開店直後の8時台に訪れると、アーモンドクロワッサンとバタートーストの両方を選べる確率が高い。

Kopitiam @ Tiong Bahru Market(ティオン・バル・マーケット・コピティアム)

この街の朝の心臓部と言えるのが、1層がウェットマーケット、2層がホーカーセンターになっているティオン・バル・マーケットだ。朝7時に足を踏み入れると、カヤトーストを焼く炭火の煙と、コーヒー豆を煮出す香ばしい匂いが混ざり合って迎えてくれる。コピティアムとは、マレー語で「コーヒーショップ」を意味する言葉。テーブルに着いて老舗の店主に「コピ・オー(ブラックコーヒー)」と告げれば、白いカップがすぐに運ばれてくる。常連のおじいさんたちが広東語で語り合う横で、ゆっくりと一杯をすすることができる。

地元の人が知っていること: 「コピ・C(エバミルク入り)」か「コピ・オー(砂糖のみ)」かを最初に決めておくと、店主への注文がスムーズ。半熟卵は醤油と白胡椒で食べるのがシンガポール流。

カヤトースト(Kaya Toast)

ティオン・バルの朝食文化を象徴する一品が、カヤトーストだ。薄く切った食パンをカリッと焼き、ヤシミルクと卵で作られた甘いカヤジャムと、分厚いバターを挟む。一口食べると、ジャムの甘みとバターのコクが広がり、シンプルなのに深い味わいが残る。半熟卵に醤油と白胡椒を少し垂らし、トーストを浸しながら食べるのが地元のスタイル。食べ方を知っていると、隣のおじさんが少し目を細めてくれる、そんな朝だ。

地元の人が知っていること: カヤジャムはパンダンリーフ(班蘭葉)で色づけされたグリーン系が本来の伝統スタイル。黄色いカヤはより甘く、緑のカヤは香りが立つ。

ティオン・バルの壁画ストリート(Tiong Bahru Mural Walk)

路地を一本入ると、アーチ型の白い建築の壁に、地元アーティストによる壁画が点在している。描かれているのは、コピティアムで新聞を読む老人、鳥かごを掲げて散歩するおじさん、朝市で野菜を売る女性——かつてのティオン・バルの日常だ。写真映えするスポットとして知られるが、朝の早い時間帯はほとんど人がおらず、静かに壁画と向き合うことができる。建物自体も1930年代のアールデコ様式で、シンガポール国家遺産局により保護されている。

地元の人が知っていること: Yong Siak Stの「鳥かご散歩」の壁画は午前中に順光となり、もっとも美しく撮影できる。

Books Actually(ブックス・アクチュアリー)

シンガポールでもっとも有名な独立系書店のひとつが、ティオン・バルの路地に佇む「Books Actually」だ。入口の古書の積み重ね、手描きのPOPサイン、狭い通路にひしめく本棚——すべてが意図的ではなく、自然と積み重なった時間の証のように見える。地元の作家の作品や東南アジア文学を中心に、英語の本が丁寧にキュレーションされており、旅の記念に一冊選ぶのも良い。朝の開店直後は静かで、店主と短い会話が生まれることもある。

地元の人が知っていること: 入口脇のワゴンにある「S$5均一の古書コーナー」は、地元の常連が必ず立ち寄る隠れた名物。

おすすめの回り方

ティオン・バル、朝8時。路地の奥に残るコピティアムと、一枚のカヤトースト

ティオン・バルの朝は、ゆっくり歩いても3〜4時間で十分に楽しめる。以下のルートを参考に、自分のペースで組み替えてほしい。

07:00 — MRTティオン・バル駅(EW17)下車、Seng Poh Rdを北へ徒歩約5分 ↓ 07:10ティオン・バル・マーケット2Fへ。コピと半熟卵でまず一息つく(30〜40分) ↓ 07:50 — マーケット1Fのウェットマーケットを軽く見学。野菜・魚・香辛料が並ぶ朝の市場(15分) ↓ 08:10カヤトーストを同じマーケット内か近くのコピティアムで。席に戻って2杯目を頼む余裕があれば最高(20分) ↓ 08:30 — Yong Siak St方面へ徒歩3分。壁画ストリート沿いをゆっくり歩きながら写真を撮る(20〜30分) ↓ 09:00Tiong Bahru Bakeryでクロワッサンをテイクアウト。Eng Hoon Stのベンチで食べるのが地元流(15分) ↓ 09:30Books Actuallyの開店まで周辺を散策、または10時の開店を待って入店(30分) ↓ 10:00〜10:30 — 近くのカフェでゆっくり締め、またはMRTで次の目的地へ

予算・移動・予約

ティオン・バル、朝8時。路地の奥に残るコピティアムと、一枚のカヤトースト

移動:

1人あたりの目安予算:

予約:

知っておきたいこと

ティオン・バル、朝8時。路地の奥に残るコピティアムと、一枚のカヤトースト

おわりに

ティオン・バルは、「観光する」場所というより、「過ごす」場所だ。カヤトーストの甘さ、コピの苦み、壁画の前で足を止めたほんの数秒——そういった小さなかけらが積み重なって、旅の記憶になる。シンガポールに行く機会があれば、一日の最初の数時間を、この路地に預けてみてほしい。マリーナ・ベイとはまた違う、土地の呼吸が、きっとここにある。

まず一杯、コピ・オーから。日記、続きます。

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