プノンペンの朝は、思っていたよりずっと早く動き出します。まだ薄暗いうちから屋台の灯りがぽつぽつと灯りはじめ、路地のあちこちから湯気が立ちのぼる頃、わたしもふらっと宿を出て、下町の食べ歩きをはじめてみました。
路地を一本入ると、街の呼吸が聞こえる
大通りから一本路地を入ると、空気がふっと変わります。バイクの音は遠ざかり、代わりに鍋を打つ音、油の弾ける音、地元の人たちの低い話し声が耳に届きます。観光客向けの看板はほとんどなく、目印になるのは煮込みの匂いと、人の集まる小さな輪。朝の屋台は、その日の食材と気分で並ぶものが少しずつ違うそうで、毎朝が一期一会の食卓です。
プラスチックの小さな椅子に腰掛けて、まずは一杯。クメール語のメニューは読めなくても、隣の人が食べているものを指差せば、おばちゃんがにっこり頷いてくれました。肩の力を抜いて、ゆっくり待つ時間も、旅の一部ですね。
今日の一杯、湯気の向こう側
最初に頼んだのは、カンボジアの朝の定番クイティウ。米麺のスープに、骨付き肉やもやし、香草がたっぷり。澄んだスープを一口含むと、思ったより穏やかで、ほんのり甘い。テーブルに置かれたライムを絞り、唐辛子を少しだけ加えると、ぐっと表情が変わります。
隣のおじさんが「もっと入れていいよ」と身振りで教えてくれました。言葉は通じなくても、朝ごはんの席ではみんな少しだけ家族みたいになる。そんな小さな瞬間が、この街の好きなところです。
揚げパンと甘いコーヒーで、ちいさな発見
クイティウのあとは、向かいの屋台でノム・パン・パテと呼ばれる揚げパンを一切れ。外はカリッと、中はふっくらして、軽く塩が効いています。一緒に、コンデンスミルクをたっぷり沈めたカンボジア式の濃いコーヒーを。氷がカランと鳴る音と、甘さの奥にある苦みが、寝起きの体にじんわり染みていきました。
屋台の主人に「日本から来たの?」と聞かれて頷くと、嬉しそうに親指を立ててくれました。値段は驚くほど控えめで、二品とコーヒーで日本円にして数百円ほど。価格より、この朝の景色そのものがごちそうだと思います。
等身大の朝ごはんが教えてくれること
観光名所を巡る旅もいいけれど、こうしてふらっと屋台に座って、地元の人と同じ時間を分け合うのも、旅の楽しみ方のひとつ。プノンペンの朝は、派手ではないけれど、たしかな手触りがあります。
- 時間帯: 朝6時〜9時頃が屋台のピーク
- 支払い: 小額のリエル札があると便利
- 服装: 路地裏は段差が多いので歩きやすい靴で
次にこの街を訪れるときも、わたしはきっと、また同じ路地に座っていると思います。日記、続きます。
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